国の方針は「新しく造ること」から「賢く使うこと」へ
総務省は公共施設等総合管理計画の策定等に関する指針において、公共施設等の老朽化対策が大きな課題であるとの認識のもと、「新しく造ること」から「賢く使うこと」への重点化を基本方針として示しています。予防保全型の維持管理、トータルコストの縮減、広域連携などを推進する方針です[1]。
この方針のもとで進むのが、施設の長寿命化と、統廃合・複合化です。そして統廃合が進むほど、現場では避けて通れない実務が発生します。閉じる施設の「中身」をどうするかという問題です。
総合管理計画に書かれること、書かれないこと
令和5年10月10日の総務省通知(総財務第152号)によれば、公共施設等総合管理計画の主な記載事項は次のとおりです[1]。
- 公共施設等の現況及び将来の見通し(施設の状況、人口見通し、30年程度以上の中長期経費見込み)
- 公共施設等の総合的かつ計画的な管理に関する基本的な方針
- 施設類型ごとの管理に関する基本的な方針
また、施設類型ごとの方針について、個別施設計画の記載事項と重複する内容は、個別施設計画の該当箇所を記載することで足りるという簡素化が認められています[1]。
ここで注目したいのは、計画が扱う単位が「施設」であることです。建物の延床面積、更新費用、耐用年数は計画の中核ですが、その建物の中にある机・椅子・書棚・OA機器・厨房機器・実習機材といった動産は、総合管理計画の主対象ではありません。
公共施設等総合管理計画は施設(不動産)のマネジメント計画であり、備品・什器(動産)の管理は各団体の財務規則等に基づく物品管理の領域です。両者は制度上分かれているため、施設の統廃合計画に「中身の行き先」が自動的に組み込まれるとは限りません。
具体の取扱いは団体ごとに異なりますので、自庁の財務規則・物品管理規程をご確認ください。
そもそも、資産は把握できているのか
統廃合の際に中身を扱うには、まず何があるかが分かっている必要があります。総務省自治財政局財務調査課の資料(令和6年6月25日)は、固定資産台帳の整備状況について次の数字を示しています(1,788団体)[2]。
1,381団体
300団体
現物照合可能 981団体
同資料では課題として、記載単位の未統一(半数程度が取替・更新単位での整備に至っていない)、記載項目の活用性不足(公共施設マネジメントへの活用に必要な使用耐用年数などの情報が不足)、更新の負担が挙げられています[2]。
台帳が現物と突き合わせられない状態は、「帳簿上は存在するが、実物がどこにあるか分からない」あるいは「実物はあるが台帳に載っていない」ということを意味します。この状態で施設を閉じると、中身の扱いはその場の判断に委ねられます。
統廃合の現場で、実際に何が起きるか
この領域には全国的な統計がないため、構造として整理します。
時間が足りない
閉庁・移転の日程は先に決まります。限られた期間で建物を空にする必要があるため、他部局への照会や引取先の調整より、まとめて処分するほうが確実で早い、という判断になりがちです。
受け入れ側の情報が集まらない
他の施設で同種の物品を必要としていても、その需要は表に出ていません。「欲しい人がいるかもしれない」という状態のまま、照会の手段がないまま期限が来ます。
状態が分からないと引き取られない
品目名と数量だけの一覧では、受け取る側は使えるかどうかを判断できません。写真・寸法・使用年数・状態区分がないと、照会しても反応が返ってきません。
移管の手続きが定型化されていない
部局間・施設間で物品を移す際の承認者や帳簿処理があらかじめ決まっていないと、担当者の個別調整に依存します。一度は成功しても、次の統廃合では再現されません。
「中身」を計画に組み込むための実務ポイント
POINT 1: 施設の廃止スケジュールから逆算する
閉庁日ではなく、その3〜6か月前を起点にする中身の棚卸しと照会には時間が必要です。個別施設計画に廃止時期が記載されている施設について、あらかじめ棚卸しの実施時期を紐づけておきます。
POINT 2: 写真つきで現物を一覧化する
会計上の台帳とは別に、実務用の一覧をつくる固定資産台帳は会計上の記録であり、取得価額の基準を下回る少額の物品は載っていないこともあります。しかし現場で場所を占めているのは、まさにそうした少額の什器です。実務用には、金額基準ではなく「まだ使えるか」を基準にした一覧が必要になります。
POINT 3: 庁内照会の窓口と期限を決める
「誰に聞けばいいか」を一本化する資産経営課・管財課が窓口となり、一定期間内に庁内から希望を受け付ける運用を定型化します。期限を切ることで、判断が先送りされずに済みます。
POINT 4: 処分の前に段階を設ける
庁内転用 → 他団体・地域への提供 → 売払い → 処分いきなり処分に進むのではなく、段階を定めます。物品の不用決定や売払いの手続は各団体の財務規則等の定めによりますので、事前に規則上の位置づけを確認しておくと、現場での判断が速くなります。
POINT 5: 実績を記録する
次の統廃合のための資産にする何点を庁内で再活用し、何点を処分したかを記録します。この実績が、次の施設で同じ運用を回す際の説得材料になり、財政部局への説明の根拠にもなります。
財政面の効果は、どう説明できるか
資産経営・管財の観点から見た効果は、大きく3つに分けて説明できます。
| 効果 | 内容 | 説明上の注意 |
|---|---|---|
| 調達費の抑制 | 他部局が新規購入を予定していたものを、庁内在庫で充当 | 「実際に購入予定だったか」を確認しないと過大評価になる |
| 処分費の抑制 | 処分を回避した分の運搬費・処理費 | 単価は品目・地域・処理方法で大きく異なる |
| 廃棄物の削減 | 一般廃棄物処理事業の負荷軽減 | 重量ベースでの把握が基本。CO2換算する場合は算定前提の明示が必要 |
参考として、環境省「一般廃棄物処理事業実態調査」(令和6年度)によれば、全国のごみ処理事業経費は24,489億円、国民1人当たり19,700円/年、リサイクル率19.3%、最終処分場の残余年数は24.9年です[3]。自治体は廃棄物処理の主体であるため、自らが出す廃棄物の削減は、自らの事業コストに跳ね返ります。
当社が企業向けに提供している遊休マーケットでは、1アイテムを再利用した場合の効果を調達回避 約18,000円+廃棄回避 約3,500円=約21,500円、CO2削減 約19kgとして試算しています。これは当社による試算値であり、オフィス什器を中心とした民間企業の品目構成を前提としています。
自治体の場合は対象物品の種類・単価・処分方法が異なるため、この数値をそのまま適用することはできません。実際の効果は、対象施設の品目構成に基づいて個別に算定する必要があります。
まとめ
- 総務省の指針は「新しく造ること」から「賢く使うこと」への重点化を掲げ、統廃合・長寿命化が進んでいる[1]。
- 公共施設等総合管理計画が扱うのは主に施設(不動産)であり、中身の備品・什器(動産)は物品管理の領域として別に扱われる[1]。
- 固定資産台帳は、現物と照合できない団体が300団体(16.8%)あり、取替・更新単位まで整備されているのは981団体(54.9%)にとどまる[2]。
- 統廃合の現場では、時間不足・需要情報の不在・状態情報の不足・移管手続の未定型化という4つの障壁が働く。
- 効果は調達費・処分費・廃棄量に分けて説明する。全国のごみ処理事業経費は年間2兆4,489億円であり、自治体自身が処理主体である点が民間との大きな違い[3]。