物価高が企業のコスト構造に与える影響
日本銀行が2026年7月に公表した「経済・物価情勢の展望」によれば、消費者物価(除く生鮮食品)は1%台半ばの水準で推移しており、賃金上昇を販売価格に転嫁する動きが続く中、エネルギー価格の上昇もみられるとされています[1]。さらに、原油価格の上昇やAI関連需要による半導体価格の上昇、円安の影響から、2026年度後半以降は物価上昇率が2%をはっきりと上回る水準まで高まっていくと見込まれています[1]。
同展望では、原油高を起点とした企業間取引における価格転嫁が比較的速いペースで進んでおり、これが今後、消費者段階の幅広い品目の価格上昇に波及していく可能性が高いとも指摘されています[1]。企業にとっては、原材料や設備・什器の新規調達コストが上昇していく局面が続くと考えられます。
シェアードサービスが効率化してきたもの
複数の企業からなるグループでは、経理・人事・総務・情報システムといった間接業務を1カ所に集約する「シェアードサービス」がコスト削減の手法として定着してきました。実際に、日産クリエイティブサービスでは業務時間の4割削減、東京電力では年間2億7,000万円のコスト削減といった成果が紹介されています[2]。
これらの取り組みは主に、給与計算や社会保険手続き、経理・財務業務といった「業務(コト)」の集約に焦点が当てられてきました[2]。
「モノ」の共有という次の一手
私たちが着目しているのは、こうしたシェアードサービスの対象になりにくかった「モノ」-什器、設備、機材、資材といった現物資産の共有です。グループ会社がそれぞれ別の拠点で事業を行っている場合、A社で使われずに眠っている什器と同じものを、B社が新品で調達しているという状況は珍しくありません。
これは、以前ご紹介した「社内充足率(新規購買のうち社内在庫で代替できた割合)」という考え方を、単一法人内の部署間から、グループ会社間へと広げる発想でもあります。
導入する際に押さえておきたい点
グループ会社間での資産融通は、同一法人内の部署間融通と異なり、それぞれが独立した法人格を持つ点に注意が必要です。
- 資産の所有権・帳簿上の扱いをどう整理するか(資産の移管か、貸与か)
- 無償または市場価格から著しく乖離した価格での資産の授受は、税務上「寄附金」等として扱われる可能性があるため、グループ内取引の価格設定について税理士等の専門家に確認すること
- グループ内融通のルール(誰が承認するか、記録をどう残すか)をあらかじめ定めておくこと
本記事は法務・税務上の助言を目的としたものではありません。実際の制度設計にあたっては、税理士・会計士等の専門家にご相談ください。
グループ会社の資産、まずは全体像の可視化から
遊休マーケットは、複数拠点・複数法人にまたがる資産の状況を一元的に可視化するプラットフォームです。
まとめ
物価高によって新規調達コストが上昇する局面では、グループ会社内に眠る資産を可視化し、循環させることの経済的な意味がこれまで以上に大きくなります。シェアードサービスが「業務」の効率化を進めてきたように、次は「モノ」の共有をグループ経営のアジェンダに加える価値があると考えています。